私立医学部の実態! 難易度、学費、国公立との違いは?

今、受験生をお持ちの親御さんが学生だった20年ほど前までは、私立医学部の中には入りやすいと言われる大学もありました。国公立医学部がダメなら私立があるという、いわゆる滑り止め的な受験のしかたもあったのですが、今は様相が大きく変わっています。倍率が上がり、試験難度が上がり、学費が上がり……で、もはや滑り止めにはならなくなっているのです。

私立だから入りやすいわけではない

 偏差値レベルでいうと、国公立大学の医学部は軒並み70以上で、東大京大になると75くらい必要になります。それに比べれば私立医大には偏差値が低めのところもあります。それでも65以上はないと合格は厳しいです。お父様お母様方が学生の頃はもっと低くても入れる大学が確かにあったのですが、今はそのイメージでいると痛い目を見てしまいます。

歴史と実績のある「御三家」は偏差値70~75

 昔から医学部の「私立御三家」と言われてきたのが慶應義塾大学、東京慈恵医科大学、日本医科大学です。いずれも戦前からの歴史があり、旧帝国大学とともに日本の医学界の発展を牽引して来ました。そのため、私立医大の一流ブランドとして高い人気と知名度を誇っています。
当然ながら入試はハイレベルの凌ぎ合いとなります。慶応大医学部は私立の中でも偏差値が最も高く、合格するには偏差値72.5~75、慈恵医科と日本医科も偏差値70は必要とされています。

順天堂大学がレベルアップ「新御三家」

 最近は慶応大、慈恵医科、順天堂大の3校を合わせて「新御三家」と呼んでいます。また、御三家+順天堂の4校を「私立医大四天王」とする場合もあります。
順天堂大学は近年、学費を下げたことで人気が高まり、その結果として偏差値が上がりました。今は日本医科と肩を並べる存在と言われています。

平均倍率は36~37倍 100倍超の大学も!

 それ以外の私立医大でも昨今の受験生の医学部人気を受けて、ここ10年で倍率が急上昇しました。前期は倍率20倍は当たり前で、後期になると40倍~60倍、大学によって100倍超もあります。 私立全学部の平均倍率が12倍程度であることを考えると、医学部合格がいかに狭き門かが分かってもらえるでしょう。
 医学部はもともと募集人員が少ないため、大勢の受験生で少ない椅子を取り合う激しい椅子取り合戦にならざるを得ないのです。

医学部人気で受験生を振り分けるため試験が難化

倍率が上がったことで、試験難度が上がりました。簡単な試験ではみんなが高得点を取ってしまい、点数差が開かないため、適度に難しい問題を出して点数差を生じさせ、受験生を振り分けなければなりません。医学部の受験者が増えるにつれて、少しずつ試験難度を上げているうちに、私立医学部では奇問難問が増えてしまったというのが今の状況です。

大学ごとに出題のカラーが違う

国公立医学部でも大学ごとに出題傾向は違いますが、私立医学部はさらに大学ごとのカラーが大きく違います。
たとえば、●●大学のように素直な問題でも問題数が多く、解答スピードが問われるところや、●●大学のように捻った答えにくい問題を出すところ、●●大学のように●●な問題を出すところなど、実に様々です。
そのため、大学ごとの対策を立てて本番に臨む必要があります。

補欠合格が多いのも私立医学部の特徴

国公立医学部に比べて、補欠合格が多いことも私立医学部入試の特徴です。国公立を受験する人はほとんどが国公立を第一志望にしているので、合格すれば9割以上が入学します。そのため、繰り上げによる補欠合格はごく少数しか生じません。
 私立医学部の場合は、国公立医学部や他の私立医学部と併願受験しているケースが多く、上位合格者は国公立やよりネームバリューの高い私立へと流れてしまいます。そのため、補欠100番200番まで繰り上げで合格者が出ることも珍しくありません。
 ちなみに、合格発表のとき補欠の順番を発表してくれる大学と、そうでない大学があります。メディカル系の大手予備校のサイトやネット掲示板で「今、補欠〇番まで回った」と速報が流れるのですが、順番不明の場合はじっと待つしかないのがつらいところです。

入試の多様化 評定が良ければ試験なしでも

最近は国公立大学でも入試が多様化していますが、バラエティーでは私立大学に及びません。一般公募推薦や指定校推薦、AO入試、地域枠入試などがあります。
 いずれも基礎学力の高さが求められ、評定が4.0以上を条件としているところが多いです。また、現役生と1浪生に限っている(つまり多浪生NG)ところも多いと聞きますが大半です。大学によっては評定4.7以上なら無試験で合格できる制度も。
 地域枠は大学卒業後の一定期間、その地域の大学病院や医療機関に従事することを条件とした募集です。医師の数が少ない地方の大学で、医師確保のために地域枠制度はつくられました。

学費は2000万~4000万円の大学が多い

私立医学部の学費(6年間総費用)は大学によって差が大きいのですが、だいたい2000万~4000万円の間になります。最も低い国際医療福祉大学で約1900万円、最も高い川崎医科大学で約4700万円です。
順天堂大学が2008年に学費を約900万円引き下げたのを皮切りに、複数の私立医大が学費の値下げをし、近年でも日本医科大学や東京医科大学が学費の値下げをしました。学費を安くすることで多くの受験生を集め、より能力の高い学生を獲得する狙いがあります。
一方、東京女子医科大学は2021年度入学から1200万円の引き上げをして大きな話題になりました。
学費が高い分、設備が整っていたり、学生へのサポート体制が手厚かったり、寮を完備している大学があったりといったメリットがあります。

留学に積極的な大学も増えている

最近の傾向として、学生の留学に力を入れる大学が増えてきました。東京医科歯科、慶応、順天堂、国際医療福祉などは積極的な留学制度があることで有名です。
今は医療現場でも国際化が進んでいます。外国人の患者さんが増えていますし、海外進出を図る医療法人も出てきました。そのため、「医師も国際人であるべき」との考え方が今の主流になっているのです。
海外で最先端の医療を学び、文化や言語の違う人たちと協同することで人間的にも豊かになることが期待されています。

研究医希望なら、卒業後に国公立の医局も選択可

将来的に研究医になりたい場合、国公立医学部のほうが研究はやりやすいでしょう。なぜなら、国や地方公共団体から出る研究費は国公立に集まりやすいからです。潤沢な予算の中で研究に取り組むことができるだけでなく、研究医を養成するプログラムなども充実していることが多いです。
 では、私立医大では研究はできないかというと、そんなことはありません。私立医大の中にも研究に力を入れている大学はあります。自分が研究したい分野がすでに決まっているのであれば、それを研究している大学を選んで受験するとよいでしょう。
 あるいは、大学卒業後に所属する医局を自由に選べるので、私立医学部から目的の研究室のある国公立大の医局へ入ることができます。大学で学ぶうちに興味関心が変わることもあるので、こちらが最も現実的な道かもしれません。

まとめ

私立医学部には設備が整っている、サポートが手厚いなどのメリットがありますが、学費の面では保護者の負担が大きくなります。できれば国公立を目指してほしいというのが、多くの親御さんの願いでしょう。
医学部予備校によっては教科を絞って勉強できる私立医大を勧めているところもありますが、松原塾では基本は国公立医学部を目指します。国公立医学部に入れるだけの勉強をしておけば、私立医学部の受験にも対応できるからです。

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