医学部受験の最初の関門、共通テスト突破のコツ

2023年度も共通テストの季節が近づいてきました。昨年初めて実施された共通テストは、センター試験とは異なる傾向の問題が多く、受験生たちは「手ごわかった」と感じたようです。医学部受験の第一関門である共通テストで失敗しないための対策について解説します。

共通テストになって劇的に変わったこと

2022年度はセンター試験の代わりに共通テストが実施された初めての年でした。センター試験と同じような対策をしてきた人にとっては、勝手が違って「裏切られた」気持ちになったかもしれません。その原因は、出題傾向が大きく変わったからでした。

思考力を問う問題が多かった

センター試験は「高校段階における基礎学力の到達度を判定する試験」でした。教科書にある例題や練習問題と同じような問題が出題されるため、対策がしやすかったのです。しかし、共通テストではその傾向が大きく変わり、「思考力・発想力」を問う問題が多く出ました。
センター試験は、「このパターンの問題にはこの公式」というように、教科書で習った知識を練習通りに当てはめていけば解ける問題が多かったのです。それに対して、共通テストでは問題を一読しただけでは使うべき公式が見えない問題が目立ちました。思考力と発想力を使って問題を掘り下げて考え、どの方程式を使えば解けるのかを考えないといけなかったのです。

生活に密着した問題が出題された

日常生活からの出題も全教科で目立ちました。英語では、学校の英語クラブのメンバーにあてた手紙や、インターネットに掲載された料理のレシピなど。リスニングでも、ゲームに関する議論が題材になっていました。センター試験では主に文法や構文が重視されていましたが、共通テストではより実用的な語学力が試されたのです。

基礎基本ができている人に“大失敗”はなかった

公式や定理を“なんとなく”で理解している人は、今回の共通テストは手が出なかった人が多かったでしょう。それに対して、公式や定理を本質から理解している人は、きちんと解くことができていました。

なんとなく理解する人は「かたち」で覚える

Aパターンの問題にはAの方程式というように、解法をパターンで理解するやり方は、かたちを覚えればいいので“なんとなく”の理解でもそれなりに解けます。何度も同じような問題を繰り返していれば、かたちは覚えられるからです。しかし、初めて見るかたちには対応ができません。前回の共通テストがまさに「見たことないかたち」でした。

本質を理解する人は「かたち」が変わっても対応可

一方、公式や定理の本質的な意味や役割(公式が表している事象は何なのか、どうしてこの公式ができたのか等)を理解している人は、初めて見るかたちに最初は面食らったとしても、思考力で答えを導き出すことができます。
なぜなら問題の「かたち」が変わっても、問われていることの「本質」が分かれば適切な公式を選び出すことができるからです。

ほんものの理解と日常での問題意識が大事

つまり、共通テスト対策としては「物事の本質を理解する」ことが大事になります。上辺だけの理解は単なる知識の域を出ません。腑に落とす理解こそ、どんな場面にも通用する実力になるのです。
また、日常生活でいかに周りの出来事に関心を持ち、問題意識をもって行動できるかも大事です。どんどん外に出て周りに目を向け、体験を通して社会や経済や人間や自然事象について学んでいくのです。「なぜ?」「どうして?」という視点で世界を見ていくと色々な気づきがあり、勉強で習ったことが実生活と繋がっていることが分かってくるはずです。

2023年度 教科別・共通テスト対策のポイント

では、本年度の共通テストを見据えて、教科別の受験勉強のポイントです。医学部受験の場合は2次試験に必要な「英数理」と、共通テストのみで必要な「国社」を分けて考えます。

英数理は医学部の2次試験対策が共通テスト対策になる

まず英数理ですが、医学部の2次試験では共通テストになる以前から「本質を問う問題」が多く出題されてきました。
たとえば数学で言えば、「積分の問題に見せかけて、実は三角関数の問題」というような問題が出されます。問題文自体は至ってシンプルで、さらっと読むと積分で解きたくなるのです。しかし、見かけに釣られると正解が導き出せません。「これは三角関数の問題である」と見抜けた人だけが正解への切符を手にできます。
ひっかけ問題といってしまえばそうなのですが、単純なひっかけ問題ではなく、本質を分かっていれば解けるという“シンプルだけれども奥が深い問題”が出るのです。
こうした問題が解けるように対策をしておけば、共通テスト用の勉強をわざわざする必要はありません。共通テストを想定した模擬テストを受験することと、秋頃から少しずつ予想問題を解いて慣れておくくらいで、特別な勉強はしなくてよいでしょう。

国語は古文漢文は満点を狙う

国語と社会は、英数理の足を引っ張らない程度に得点できれば良し。
現代文は時間が限られた現役生の場合は、入念な対策をとる時間があまりありません。小説・評論・ルポタージュなどジャンルによって得意不得意が分かれることと、テクニックやトレーニングでは点数が伸びにくい教科であるためです。勉強してもあまり得点に結びつかないことが多く(そもそも医学部を受験する生徒は何もしなくても半分近くは取れるのではないでしょうか)、英数理に時間を割くべきです。
古文と漢文については暗記で高得点が期待できるので、満点を目指しましょう。他の受験生も古文漢文については勉強してきます。点数差が開かないようにしましょう。

社会の暗記は早めの時期から少しずつ

社会については、ほぼ丸暗記で対策できます。共通テスト前に一気に頭に詰め込むよりは、普段の“すきま時間”を使って、少しずつ覚えていくのが効率的。そのためにも3年の春から始め、繰り返し覚えて記憶を定着させることが大事です。

まとめ

共通テストは次が2回目で、過去のデーターに基づいた対策が立てにくいですが、2023年度以降も「思考力・発想力を問う問題」「生活に密着した問題」が多く出題されると考えてよいでしょう。上辺だけの勉強ではなく、基礎基本を大切に、本質を掴む勉強をしていってほしいと思います。

(おまけ)大学入試が変わると、高校・中学入試も変わる

共通テストの出題傾向が大きく変わったことで、高校や中学校の入試もそれに合わせたものに変わってきています。単に高い学力水準を求めるのではなく、思考力や日常生活への興味関心を持っているかを問う流れになってきました。

ニュースの話題が入試問題になる?

日常生活への関心や理解という点では、日々のニュースや社会的関心事から出題されるケースも増えてくるでしょう。
もし私が中学入試の問題作成をする立場だったら、円相場の問題を出すかもしれません。たとえば「1年前にアメリカの銀行に500万円分のドルを預けました。当時の円相場は1ドル110円でした。1年後の今、円相場は1ドル150円になっています。預けたお金は日本円でいくらの価値になっているでしょうか」というように。
今春以降、急激な円安が進み、私たちの生活にさまざまな影響を与えています。興味を持って新聞・ニュースを見ているか。円安・円高の意味を正しく理解しているか。円相場の変動が生活に与える影響を知っているか等が、この問題一つで測れます。

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