医学部に逆転合格はあるのか? 奇跡は起こる?

よく塾や予備校の広告で「低偏差値から難関大に合格」などを見聞きしますが、医学部受験でも逆転合格は可能なのでしょうか? 本当のところはどうなのか、この道20年以上の経験からお話しします。

一次試験の難しい年は二次で逆転が起こり得る

 これまで共通テスト(センター試験)の出題レベルが例年より高く、平均点が低すぎる年というのが
何度かありました。こういう年には逆転合格が起きやすくなります。なぜかと言うと……

二次試験の0.1点によって運命が覆る!

平均点が低すぎるテストというのは受験者間での得点差が開きにくく、1点の中に多数の受験生がいます。特に平均点あたりに人数が集中しやすく、そこに受験生の大半がいると考えることができます。
すると、必然的に二次試験のわずか1点、もっとシビアに言えば0.1点が合否を分けることになります。ほんの小さなミスで0.1点マイナスされれば順位転落、減点されずに正解すれば逆転合格ということが実際に起こり得るのです。
(二次試験の平均点が低すぎる場合も同じ理屈で、一次試験の1点差によって合否が分かれます。)

1点多く取るには普段鍛えた“底力”が不可欠

昨年初めて実施された共通テストでは、理系科目の平均点が過去最低になった教科もありました。そういう意味で、医学部志望の受験生には非常に厳しい入試になってしまいましたが、その分、二次試験での逆転現象が起きやすかったとも言えます。
ただし、二次試験で逆転を起こせるかどうかは、日頃の努力がモノを言います。ただでさえ緊張する本番で1点多く取ろうと思えば、小さなミスを緻密に潰していく集中力が必要で、自分が持っている力を全部出しきらないといけません。限界まで力を絞れるだけの精神力や体力がないと難しいのです。

医学部受験では基礎力なしに奇跡は起きない

医学部受験は試験難度が普通の年でも倍率が高く、1点に多数の受験生が殺到する傾向は変わりません。そのため、たまたまのまぐれで医学部に合格するというのは、可能性として「ほぼない」と言えます。そもそも一か八かのギャンブルで受験できるほど医学部入試は甘くないのです。

1点多く取るには普段鍛えた“底力”が不可欠

国公立の場合は共通テストの得点を持ち点として二次試験に臨みますから、まず共通テストの点数が低い場合は大きなビハインドを抱えている状態です。定員より志願者が大きく超えると足切りに合って、二次に進めません。
 それに、共通テストの得点率が低いということは、もともとの基礎力が弱いということなので、難度の高い二次試験にはまず対応できないでしょう。共通テストで8割9割取るような受験生は、すべての教科に渡って高い基礎力があります。そんな受験生と肩を並べて、まともに勝負ができるでしょうか? 
 スポーツで例えれば、共通テストで8割9割取る人というのは一流のアスリート、6割しか取れない人は、ちょっと上手なアマチュア。ちょっと上手なアマチュアがどんなに頑張っても一流アスリートにはかなわないように、医学部入試では基礎学力の弱い人は相手にならないのです。昨日まで解けなかった問題が本番でいきなり解けるとは、ちょっと考えられません。

まぐれ合格しても入学してから泣くことに

万一、まぐれで合格できたとしても、学力が足りなければ入学してからの授業について行けず、赤点、留年……が目に見えます。
しかも、医学部は卒業すれば自動的に医師になれるわけではなく、「医師国家試験」に合格しなければなりません。国家試験は範囲が膨大なうえに難易度も高く、毎年1割~2割の人が不合格になります。共通テストで8割9割取って医学部に入った人たちが、何回も挑戦していたり、途中で医師になることを断念したりするくらいなので、生半可な学力では太刀打ちできません。

基礎力は生まれつきの地頭や資質とは関係ない

では、いざというとき逆転合格を掴むために、どうしたら基礎力を高めることができるでしょうか? 
 数学や英語に時間をかけて勉強している割にできないというとき、「自分はもともと頭の出来がよくない」と言い、医学部に入るような子は生まれつきの地頭や資質がいいんだろうと自分を納得させがちです。しかし、私に言わせれば「医学部合格と地頭や資質は関係ありません」。
 小学校レベルの計算力があやふやだと、中学レベルの問題集は解けません。時間をかけてああでもない、こうでもないとやっているうちに頭がこんがらがり、自分がどこで躓いているのかも分からなくなってしまいます。答えを見ても、なぜその答えになるのか解法が理解できません。答えを丸暗記したとしても、解法が分からないと応用ができないので、問題が変われば解けなくなってしまいます。
 要するに、学校で教わる教科書の学習内容をきちんと理解できているか否かが、基礎力のある・なしになるのです。

王道こそ大事 学校の勉強をしっかりと

基礎力を身につけるうえで、学校の授業はとても役に立ちます。授業の中で「分からない」を残さないことが大事です。分からないことを残したまま次に進むと、分からないことが積み重なっていき、後から解消するのが大変になってしまうからです。
不明点があれば教師に聞くなどして、そのときに解決するようにしましょう。
基礎力がひと通り頭に入っていれば、受験勉強自体は多少スタートが遅れても取り戻すことができます。

本気・素直に努力できる人は強い

受験勉強の遅れがあっても挽回できる生徒には共通点があります。私が見てきた生徒の中で挽回していった子というのは、①本気で「医学部に入る!」と覚悟を決めている、②素直に言うことが聞ける子たちでした。
 本気度が足りない子や素直さが足りない子は、結局「たまたま調子が悪かった」「問題を読み間違えただけで、ちゃんと読めばできた」など言い訳をして、自省ができないことが多いのです。入試本番は一発勝負で、こんな言い訳が通るわけがありません。
 本気で学力を高めたいと思っていて、素直に人の言うことが聞ける子は、余計なことをしないでまっしぐらに目標に向かって走ることができます。「いつまでにこれをやる」と講師と約束したら本当にちゃんとやってきますし、自己流であれこれすることがないので、最短の時間で正解のルートを辿っていけるからです。

奇跡は待つな、自分で起こそう!

結論として言いたいのは、「奇跡が起こらないかと待っていても、医学部受験においては奇跡は起きません」ということ。宝くじに当たるようなラッキーを期待するのではなく、自分で合格を手繰り寄せる努力をすべきです。きちんと努力をした者には、いざというとき底力が湧いて、奇跡を起こせる可能性が出てきます。奇跡は“自分で起こすもの”なのです。

まとめ

「低偏差値から難関大学へ」の逆転合格は、医学部においては「ない」と考えられますが、途中で方向修正や正しい勉強法をとることで、時期次第では可能だともいえます。ただし、直前で焦らないためにもまずは基礎学力の積み重ねが重要です。
基礎力を養うために、まず学校の勉強を大事に。学校の定期テストは基礎力の確認になるので、しっかり取り組みましょう。確実に合格するには、早めに専門的な医学部受験の指導を検討するのが近道だと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です