医学部受験の難易度は大学によって違う! 実態と傾向を解説

20年前の医学部受験の感覚でいると痛い目を見る

親が医師をしていて、子どもを医学部に入れたいというケースは多いですが、そういう親御さんによくある勘違いとして、「自分が合格した20年前の感覚で、今の医学部受験を捉えている」というのがあります。この考え方は大変危険です。

私学でもそこそこの学力で入れる大学はない

20年前は私学医学部には、それなりの偏差値で入れる大学もありました。親が大学OB・OGならその子どもを優先的に合格させる優遇措置もあったのです。
しかし、今はその考えは通用しません。
国公立では昔と変わらず、東大理三を筆頭に旧帝大クラスは偏差値70オーバーです。私学も医学部御三家といわれる慶応、東京慈恵、日医クラスは東大並み。比較的入りやすいといわれる大学であっても偏差値は65以上、最低でも60以上は覚悟しなければなりません。

倍率200倍超の大学も 医学部は0.1点の戦い

2020年度入試における各大学医学部の合格倍率を見ると、10倍20倍は序の口で、50倍を超えるところも目立ちます。久留米大学・後期はなんと167.2倍(受験者数863人、合格者5名)です。
入試ではボーダーラインの得点付近に多くの受験生が集まりますから、ほんの1ヵ所詰めが甘いだけで順位が100番200番と変わってきてしまいます。それこそ、わずかな計算ミスが命取りになってしまうのです。

親が現実を知り、子どもに言って聞かせるべき

このシビアな現実をまず親が知っておかないと、子どもをやる気にさせるにも説得力のある話ができません。
特に現役生は入試未経験のため、どうしても甘いほうに考えがちです。「なんだかんだ言っても通るでしょ」「いざとなったら追い込みをかけるから大丈夫」「現役生は怖いもの知らずで本番に強いというし」など、自分の実力にバイアスがかかってしまいます。
しかし、現実はそんなに甘くありません。現役生が考えている何倍、何十倍も医学部受験は厳しいのだということを、親御さんがきっちり話して聞かせてあげて欲しいと思います。

年々人気が高まり、過酷さを増す医学部入試

もう少し医学部受験の現状を掘り下げてみましょう。
日本にある医学部は全部で82(国立大学が42校、公立大学が8校、私立大学が31校、防衛医科大学校の1校)。そのすべてを合わせた入学定員は約9000人です(国公立大5375人、私立大3468人、防衛医科大学校85人/2020年度の募集人員より)。

直近20年で医学部志願者は倍増

定員枠が9000人に対して、毎年10万人以上の受験生が医学部を受けると考えると、どれだけ過酷かが分かります。
しかも、医学部人気は年々高まっています。私学医学部だけでも志願者数は2000年の4万7602人から2020年の10万560人へと、この20年で2倍以上に増えています。
その背景には、大学生の就職難があると考えられます。資格取得のできる学部の人気が高まっており、中でも最も将来性の確かなのが医師の資格だからです。また、女子の医師志望が増えていることや、一部の私学が学費を値下げしたことも影響しています。

私学医学部の偏差値と学費の関係

学費の話で言えば、私立の医学部は、偏差値の高い医学部は学費が安く、偏差値の低い医学部は学費が高い傾向にあります。
国公はどこも一律で6年間で350万円ほどですが、私立は大学によってかなり開きがあります。慶応や東京慈恵、順天堂など歴史と名のある医学部は2000万円前後の場合が多くなっています。学費の高い大学では4000万円超や4700万円のところもあります。
国公立大学に入ってくれれば親孝行ですが、狭き門なので、親には私学医学部に入学させるだけの資金力も必要になってきます。

地域枠入試には少し注意が必要

比較的倍率の低い受験のしかたとして、医学部地域枠制度(いわゆる地域枠)を利用する方法があります。地域枠とは医師不足が深刻な地域において、卒業後に一定年数その地域で働くことを原則として採用する制度です。
地域枠入学者は奨学金も貸与されるため、そのメリットが注目を集めがちですが、注意点もあります。
地域枠では地元の受験生が採用されやすく、県外受験生は不利になると言われています。2年留年すると放校となり、貸与された奨学金を全額返還しなければならない大学もあります。また、地域枠で採用されると必然的に大学医局に入ることになり、医局から出ることは難しくなります。
目先の入りやすさではなく、自分がその地域に骨をうずめる覚悟で働きたいのかをよく考えたうえで受験するようにしなければいけません。

国公立は良問の難問が多く、私学は癖のある問題も出題される

入試の出題傾向としては、国公立と私学とで大きく分かれます。国公立は質の高い難問が多く、私学は一般的な問題だけではなく個性的な問題が出題されることもあります。

国公立は物事の本質の理解が重要

まず国公立は共通テストを受けることになるので、5教科の勉強をすることになります。二次試験では良問の難問に対応できる力を養いましょう。
国公立で難問の聴聞が多い理由は、文科省が定める学習指導要領の範囲内で高度な問題が出されるからです。
たとえば、「円周率が3.05より大きいことを証明せよ」のような問題が出されます。πは中学校で習いますが、π=3.14と知っているだけではこの問題は解けません。物事の本質を理解していないと解けない問題を突いてくるのが国公立入試の特徴です。

私立は自分が有利に戦える大学選びが大切

私学は大学にもよりますが、数学、英語、理科2科目で受験できることが多いです。教科を絞って勉強できますが、学習指導要領以外の範囲も出題してくることと、特定の科目の配点が倍になるなど試験方式が多彩です。つまり、自分の得意科目の配点の高い大学を選ぶなど、戦略が物を言います。また、大学の先生が問題作成をするので、先生ごとのカラーが問題に反映されます。
大学の先生が異動などで変わると、出題傾向がその年からガラッと変わってしまうことも……。「今まで出たことのない単元だから今年も出ない」と決めつけて勉強しないでいると、虚を突かれる恐れもあるので気は抜けません。
過去問は参考にしつつ、すべての範囲を勉強しておく必要があります。

まずは国立を目指して勉強しよう

以上、国立と私学の比較を中心に、医学部受験の難易度について説明しました。
国立を受けるか、私学を受けるかは入試直前になって決めればいいので、まずは国立を目指して勉強しましょう。
国立に合格するだけの力があれば、たいていの私立には合格できます。また、共通テストを利用しての私立受験にも役立ちます。

まとめ

ざっと述べただけでも、医学部受験はこれだけ高い壁となっています。思い付きの勉強ではまず合格できません。できるだけ早いうちから志望校に合わせた攻略法を練り、計画的に勉強していくことが大事です。

親子で現実を直視して、気を引き締めて受験に立ち向かっていただきたいと思います。
医学部の学生が身近にいるなら、受験のリアルを語って聞かせてもらうのも参考になります。

塾長 松原澄子
1987年の松原塾開校以来、一貫して少人数制の医学部受験指導に取り組む。
特に幼児期から学習習慣を定着させる手法に定評があり、独自の受験指導で九州エリアでの実績を重ねてきた。
2人の息子と1人の娘を持ち、3人全員を国立大学の医学部に現役合格させた。

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