目指せ!九州大学医学部 2022年度の入試分析と2023年度の対策

2022年度の大学入試は大学入学共通テスト(以下、共通テスト)が初めて実施されるなど、大きな変化の年でした。共通テストの平均点が大きく下がったことで、九州大学医学部医学科の受験にも小さくない影響があったのですが、当塾生は無事に合格を勝ち取って来て、私もホッとしています。読者の中には今年度の入試がどうなるのか、気を揉んでいる方も多いと思います。私なりに昨年度の共通テストおよび九州大学医学部入試を総括し、今年度の対策を考えてみます。

共通テストの難化で九大医学部は例年以上の熾烈な戦い

2022年度大学入試で最も大きなトピックといえば、センター試験の代わりに実施が始まった「大学入学共通テスト」です。予想以上に試験難度が高く、思っていたほど得点できない受験生が続出し、志望校の変更を余儀なくされるなど波乱の幕開けとなりました。

共通テストの平均点が理系科目で大きく低下

大学入試センターが発表した22年度共通テストでは、前年度のセンター試験と比べると、多くの科目で平均点が下がっています。特に数学や理科で下がり幅が大きく、数ⅠAは約20点、生物は23点以上も下がりました。
国公立の医学部入試では共通テストの得点を“持ち点”として二次試験に臨みますが、その際に理系科目の配点を高くしている大学が多いのです。つまり、共通テストで理系科目が不振だと、持ち点が少なく合否判定で不利になったり、定員オーバーの場合は足切りにあって試験そのものが受けさせてもらえなかったりなど、影響は甚大です。

共通テストが難しすぎて試験中に泣き出した受験生も

共通テストの前評判では、1年目はセンター試験並みの難度で、2年目から難度が上がるのではないかと言われていました。しかし、蓋を開けてみれば1年目からいきなり難度が上がり、センター試験にはなかった形式や分量の問題が出るなど受験生を戸惑わせました。長文を読んだうえで思考力を問う問題が多かったため、単純に解法を暗記しているだけでは解けなかったのです。
試験を受けている最中に、難しさのあまりパニックになり頭が真っ白になってしまった人や、問題が解けないショックで泣き出した人がいたとニュースになっていました。それくらい今回の共通テストは受験生にとって過酷でした。

東大・京大医学部から九大医学部に受験者が流れた

当初の想定よりも共通テストで得点できなかったという受験生たちは、受験校の変更を余儀なくされました。それは上位校の大学でも同じです。東大理Ⅲ(医学部)や京大医学部の受験を予定していた最上位層の受験生たちが、九州大学医学部へと多く流れてきました。その結果、九州大学医学部は例年以上のハイレベルな戦いを余儀なくされました。

2021年度の九大医学部2次試験を徹底分析!

九州大学医学部の二次試験については、近年、出題レベルが難しくなってきています。特に数学は東大医学部に相当する難しさです。理科(物理と化学の2科目)は問題が難しいのはもちろん、過去に出題されたことがない分野・単元の問題が出題されることがあり、過去問での対策が通用しません。受験生にとっては非常に手強い相手と言えます。

九大医学部で初めての“足切り”が実施

東大京大から多くの受験生が移動してきた結果、九州大学医学部では定員110名のところ300名を超える志願者が集まりました。定員の2.5倍を超えると第1段階選抜(足切り)があるのですが、今年は2.8倍で史上初となる“足切り”が行われ、20数名が二次試験に進めませんでした。
例年、九大医学部では足切りがなく、センター試験の結果が多少悪くても出願して二次試験で逆転することができたのですが、今年は難しい戦いを強いられた受験生が多かったのです。

数学は数年前から難度が高くなっている

数学は3年ほど前(2020年度くらい)から明らかに問題の難度が上がりました。以前は一読しただけで解法がパッと思い浮かぶ問題も多かったのですが、今はじっくり考えなければ解法が分からない問題が増えています。
 一昨年(2021年度)の入試では、過去問で対策してきたことが全く通用せず、絶望から泣き出した久留米附設高校の女子が2名いたと、すぐに情報が伝わってきました。それほど今の九州大学の数学は解くのが難しいのです。
 数学が難しくなってきた理由としては、近年、九大医学部の受験生のレベルが高くなっていることがあると思います。標準的な問題では得点差が付きにくくなってきたため、難度を上げることで本当に数学の能力の高い者を選抜しようとしているのではないかと、当塾では分析しています。

化学・物理は過去問を裏切る問題が当たり前に出る

九州大学の理科は難度が高いこともありますが、一番厄介なのは「過去問を裏切ってくる」ことです。過去に一度も出題されたことのない単元がいきなり出たり、昨年と同じ大学の問題とは思えないようなガラッとパターンの変わった問題が出たりなど、とにかく番狂わせが多いです。
 九州大学医学部の合格実績を多く持つ塾や予備校なら、過去問が対策にならないことは周知の事実なので、それなりの対策をしているものですが、それを知らない受験生は得点できずに失敗しがちです。

英語は例年通りの難度だが、思考力を問う問題が増えた

英語については難度的にはほぼ例年通りで、得点率●%が中間層となるような標準的な難しさでした。
いつも英語が標準的な難度である理由としては、文学部や工学部など他学部も同じ試験を受けるため、あまり難しくし過ぎると他学部で平均点が下がりすぎて、得点差が付きにくいことが考えられます。そのため、英語については今後も大きく難度が上がることは考えにくいでしょう。
ただし、出題の傾向は少しずつ変わって来ています。共通テストが思考力や読解力、論理性を必要とする出題内容・形式にシフトしたのと同様に、九州大学の英語試験も単に構文を覚えているだけでは太刀打ちできない問題が増えました。

2022年度の九大医学部入試はどうなる?対策は?

では、22年度の結果を踏まえて、23年度以降の対策をどうしていけば良いでしょうか。基本的には、共通テストがどれだけ難しくなっても、二次試験の傾向がガラリと変わったとしても、“本物の実力”があれば動じることなく対応ができます。
 本物の実力を養うための対策としては、次のようなポイントを大事にしてください。

共通テスト対策:今年度を基準に得点率●割を目指そう

今年の共通テストが特別難しかったのか、2年目以降も同じレベルが続くのかは分かりません。ただ、従来のセンター試験が平均点6割を目安に作られていたのに対して、共通テストは「平均点5割」を目安にしているという話があります。
それを踏まえると、今回の数学のようにあまりに平均点が低すぎる場合は、もう少し平均点が高くなるよう易化が予想されますが、全体としては今回と同程度の難度で推移するのではないかと見られています。
これまで九州大学医学部はセンター試験の得点率9割が必要とされてきました。

2次対策:高1高2は“思考する訓練”に時間を割こう

共通テストも九州大学の二次試験も、思考力・読解力が不可欠です。暗記や表面的な理解で戦える、いわゆる「知識詰め込み式」の時代はもう終わったということ。これからは、「知識をいかに使って問題を解いていくか」「知識を組み立てて、いかに理論や解法を導き出すか」が重要な時代です。
 思考力や読解力、論理性を鍛えるには、たくさん問題を解くことより「じっくり時間をかけて問題と向き合い、考え方の筋道を理解する」訓練が大事です。たとえば、数学で分からない問題や誤答した問題があったとき、解答を見て「ああそうか」と流すのではなく、解説をしっかり読んで、なぜそういう解答になるのか、どういう論理の道筋を通ってその答えに辿り着くのかを理解するようにします。そして、解説を見なくても自分で解けるまで訓練します。
 高1高2はまだ時間的に余裕があるはずなので、この時期にしっかり思考力を鍛える訓練をしましょう。

2次対策:高3は基礎の徹底と受験に照準を合わせた演習を!

高3になると受験のための勉強が始まります。基礎基本は高2までに押さえておきたいですが、もし不足がある場合は遅くても高3の夏までにリカバリーして完璧にします。
 基礎基本が頭に入ったら、一刻も早く九大医学部入試に備えた演習に入りましょう。自分のレベルにあった演習で実力を積み上げていくことになりますが、数学については、最終的には東大京大レベルの問題に当たる必要があります。全体にかなり難度の高い問題が多いですが、中には標準的な問題も混ざっています。高度な問題を解くことも大事ですが、標準な問題をミスしないで確実に得点していくことも戦略として非常に重要です。
 理科については、どんな問題が出るか予想がつかないので、山を張るのは危険です。苦手な分野・単元をなくして、どんな問題にも対応できる総合的な学習をしましょう。
 英語については、あまり捻った問題や難しい問題は出ないと思いますが、理科の例のように過去問を裏切る問題が出ないとも限りません。出題傾向が変わることも想定しての対策が必要です。
 数理英いずれの科目も手当たり次第に問題集を説いても、それが自分にあっていなければ力にはなりません。無駄な時間を過ごすことなく、ピンポイントでそのときに必要な学習をしていきましょう。勉強のモチベーションを切らさないことも大事です。

受験直前対策:赤本は過去2~3年だけ解けばOK

赤本は九州大学医学部受験では必須ではありませんが、解いて安心したいという心理もあります。その場合は直近2~3年だけ解きましょう。それより古いものを解いても対策にはならないので、あまり執着しないことです。

出願書類対策:志望理由書の作成に時間を取られるな

九州大学医学部では2022年度より出願の際に「志望理由書」の提出が必要になりました。書くべき分量は多くないのですが、文章を書くことに慣れていない場合は書くのに苦労すると思います。
しかし、受験期に教科以外のことに時間を取られるのは痛いです。学校や塾、予備校の先生などに相談し、手ほどきしてもらうことをおすすめします。フォーマットをもらって、それに当てはめて書いていけると時間短縮になります。

面接対策:基本的なマナーや受け答えの練習をしよう

面接は得点化はされないので、合否判定の際の参考程度と考えて良いでしょう。大学側が見ているのは、基本的な挨拶や受け答えができるか、身なりは整っているか、その場にあった言葉遣いができるか、人の眼を見て話せるか、といったことです。
 身近な人に試験官役をやってもらって面接のシミュレーションをしておくと安心です。

まとめ

九州大学医学部入試は、問題がハイレベルなだけでなく出題パターンが一変したりなど油断ができません。個別に弱点を見つけて穴を埋める対策をするのが近道です。
 また、受験対策では「志望校の最新の情報」を把握することが大事です。数年前の古い情報で対策をしていると、見当違いの対策になってしまうことがあるので、十分に気をつけてください。

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